お知らせ

令和3年度学校課題

日光市立今市小学校

1 研究主題 


自ら問いをもち,学び合いを通して主体的に解決しようとする児童の育成
      ~深い学びができる授業づくりを目指して~


2 主題設定の理由
 中央教育審議会の教育課程部会では、「2030年は少子高齢化がさらに進行し、グローバル化や情報化が進展する社会の中では、先を見通すことがますます難しくなる」としている。そして、そのような予測できない未来に対応するためには、自分の夢や希望に向かって社会の変化に主体的に向き合い、その過程を通して、一人一人が自らの可能性を最大限に発揮し、よりよい社会と幸福な人生を自ら創り出していくことが重要であると指摘している。社会の加速度的な変化に伴う生活や価値観の変化の中でも、蓄積された知識を礎としながら、膨大な情報から何が重要かを主体的、的確に判断し、自ら問いを立ててその解決を目指し、他者と協働しながら新たな価値を生み出していくために必要な資質・能力を身に付けることが重要である。

 また、令和2年度から新学習指導要領の完全実施となり、「主体的・対話的で深い学び」を視点とした授業改善のもと、各教科目標に共通する3つの資質・能力(「知識・技能」「思考力・判断力、表現力等」「学びに向かう力・人間性」)の育成に重点を置いている。

 一方で、新型コロナウイルス感染症が世界で猛威を振るい、教育活動の制限や見直しを余儀なくされ、改めて児童の「学びの保障」の重要性の再認識と、ICT教育の環境整備と充実の切実性が叫ばれている。また、学習進度が著しく遅れている中でも、学校教育ならではの学びを大切にし、学習内容の重点化を行いながら教育課程を進めていかなければならない。さらに、中央教育審議会では、学校教育は学習機会と学力及び全人的な発達・成長を保証する役割や人と安全・安心につながることができる居場所に加え、全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと協働的な学びとを一体化して充実することを目指した「令和の日本型学校教育」の実現に向けた改革の必要性を訴えている。

 本県においては、予測困難な時代をたくましく生き抜く力を育むために、「児童生徒の資質・能力を育成する観点から、多様な子どもたちを誰一人取り残すことのないよう、個別最適な学びと社会とつながる協働的な学びを実現する必要がある。」(「栃木県教育振興基本計画2025」)とし、確かな学びを育む教育の充実を目指している。

 日光市においても、「子ども主体の授業づくり」に取り組み、子どもたち自身が対話を通して自分たちの知りたいことや考えたことを追究していく中で、気づきや新たな発見を得ることのできる学習を目指している。また、「授業改善指導訪問」等を通して、教員の指導力及び資質向上を図っている。

 本校では、昨年度、日光市の学力向上改善プラン・プロジェクト評価プランをもとに、全職員で授業改善や基礎学力の向上に努めてきた。また、日光市の授業デザインをもとに、全職員がめあてと振り返りの整合性を図ったり、授業中にめあてを振り返ったり等、研究を重ねてきた。さらに、月に3回「ホットタイム」を設け、学校課題や日々の授業実践について話し合い、メンターチームとして個人の資質・能力の向上に努めてきた。一方で、授業を通して身に付けさせたい資質・能力がはっきりしていないと、主体的・対話的な学びを行っても、児童の学びが深まらなかったり広がらなかったりすることが分かった。深い学びとは、各教科の目標の実現であり、学習指導要領をもとに教師が授業のねらいを児童の姿をもとに明確にすることが重要である。

 本校の児童は、全職員で行う「いきいきタイム」「ぐんぐんテスト」により、各学年で身に付ける基礎学力の定着が図られている。また、「めあて」や「振り返り」それぞれの意味をよく理解している。さらに、友達に分からないところを聞いたり、必要に応じて助言をしたり、学び合おうとする姿勢が育ってきている。一方で、まとまった文章を読んだ後、条件をもとに書いたり、要旨をまとめたり、自分の考えを問題に沿って書くことができない児童が多いことが、昨年度のCRT・NRTテストで明らかになっている。

 そこで今年度は、昨年度までの研究の成果を継承しつつ、本年度の学校教育目標を踏まえ、さらに学力を目指すために以下の2点に取り組む。

 授業(単元や本時)の構想では、児童に身に付けさせたい資質・能力(ゴール)を明確にした上で授業展開を考えるようにする。導入では、ゴールに基づいて児童が発展性や手応えを感じたり、自分事として捉えたりする課題やめあてを提示し、児童の「やってみたい」「解決したい」という意欲を高める「問い」を工夫していく。展開では、教師のコーディネートや発問で児童同士をつなぎ、児童が友達と対話を通して考えを深めたり広げたりできるようにしていく。終末では、めあてをもとに学習活動を振り返る中で、振り返りの視点を示したり、文字数を制限したりして、児童が自分の考えを適切に表現する力を身に付けるようにする。そして、児童が自分の学びを振り返り、次の学習につなげられるようにする。

 加えて、進んで学び合える人間関係づくりに力を入れる。授業での、学級全員が課題の達成を目指すという必然性をもったペア・グループ学習を通して、お互いのよさを認め合い高め合うとともに、仲間と学び合いたいという意欲を高めるようにする。

 以上の取組を行うことにより、自ら問いをもち、友達と学び合いながら主体的に解決することができる児童を育成することができると考え、本研究主題を設定した。


3 目指す児童像
 

 ・常にめあてや目標をもち、共に学び合うことができる子ども

 ・興味・関心をもって主体的に学習に取り組むことができる子ども

 ・分からないことを素直に友達や大人に聞くことができる子ども

 ・友達が分からないことを理解し、必要なアドバイスができる子ども

 ・物事をよく見つめ、筋道を立てて考えたり、情報を適切に処理して考えを形成したりできる子ども

 ・めあてをもとに分かったことや分からなかったこと、成長したこと等を振り返ることができ、

  次の学びにつなげることができる子ども

 ・学び合いを通して互いのよさを認め合い、自信をもって活動できる子ども


4 研究の仮説
 「問い」のある課題の工夫や学び合いの質を高める工夫、まとめ・振り返りの充実などの手立てを工夫して、深い学びができる授業づくりに取り組めば、『自ら問いをもち、学び合いを通して主体的に解決しようとする児童の育成』が実現するであろう。


5 研究の方針及び内容
 上記の仮説を検証するために,以下の6つを研究の視点として,授業を展開していくこととする。

①児童が興味・関心をもてる「問い」のある課題の工夫

 〇児童が課題を自分事として捉えられるような教師の働きかけや課題提示を工夫する。

 〇教師と児童が共に本時の学習のねらいを共有し、方向付けをしっかりと図る。

 〇児童が「難しそうだけどやってみたい」と思えるジャンプの課題を設定するなど、課題や学習問題を工夫する。

   ※ジャンプの課題…教科書より1ないし2ランク上のレベルの高い課題。

            ・学校生活や日常の生活で活用できる問題。

            ・多様な解決方法が考えられる課題。

            ・1学年か2学年上の単元につながる課題。

            ・多くの情報から必要な情報を選び解決する課題。 

②児童が主体的に考え、学び合いの質を高められる工夫

 〇学習環境の工夫

   ・グループ構成…低学年はペア学習を中心に行い、グループ(3~4名)学習にも挑戦する。

           中学年以上はペアやグループ学習から学級全体の学び合いができるようにする。

 〇学び合いの仕方の工夫

   ・教師のコーディネート…「分からないことを友達に聞くことが学び合いにとって大切だよ」

               「分からない友達が分かる説明ができたら、お互いにいいよ」

               「あなたの悩んでいることは、〇〇さんに聞いたら解決するかもしれないよ」

               「あなたのこの考えはすごいね。他の友達にも知らせてあげたいね」

    など、児童が思考をストップしたり、一人で困っている児童(「ぼっち学び」)をつくったりしないようにする。

    ※一人でじっくり考えている児童は、「ぼっ ち学び」ではないことに留意。

 〇「みんなで問題解決」の意識付け

   学び合いの目標として、「みんなで問題を解決しよう」と意識させる。

           一人でも分からない児童がいたらクラス全員で力を注ぐという意識を定

           着させる。 

③学びの到達点(ゴール)の明確化

  ・授業デザインの中の「ねらいを達成した子どもの姿」の欄に、本時の授

   業のねらいを理解したであろう児童が、

   授業のまとめや振り返りでどのような考えを書ければ授業のねらいを達

   成したと言えるのかを子どもの言葉で想

   定して記入し、授業を行う。

  ・「深い学び」とは、各教科目標のことであると捉えられる。また、授業の中で、「具体」的な内容を「抽象」的

   な内容と行き来することで、子どもたちは学びを深めていき、各教科目標の実現、つまり深い学びにつながって

   いく。 

④まとめ・振り返りの充実(※今年度の重点研究内容)

  ・本時の学習に対して児童がどのくらい理解したかを把握し、次時の指導へとつなぐ評価の工夫をする。

  ・振り返りで児童に書かせる内容は、低・中・高の発達段階を考慮して具体例を掲示する。

  ・振り返りの時間をしっかりと授業の中に位置づける(タイムマネジメント)。

  ・教科の特性や発達段階にあった振り返りの例を提示する。

⑤互いに学び合える学級づくり(※今年度の重点研究内容)

  ・分からないことや失敗したことを温かい気持ちで受け止め、みんなで助け合って解決していける学級の

   雰囲気をつくっていく。

  ・教師が児童のよさを取り上げて紹介して褒めたり認めたりしていくことにより、子どもに自信をもたせ

   たり、安心感を味わわせたりする。

  ・児童のよい振り返りの記述や工夫された考えの書き方などをクラス内に紹介するなど、よい学習モデル

   を掲示することで、他の児童のよりよい学び方につなげていく。

  ・理想の学級像(夢や希望)を教師と子どもが常に語り合い、できていることやできていないことを確認

   し、理想の実現を学級全体で目指すことにより、前向きな人間関係を築いていく。

⑥問題解決的な学習過程を意識した授業づくり

  ・「主体的・対話的で深い学び」を実現する授業改善には、課題や学習問題を自分事として捉え、自分の

   もっている知識を使って予想し、予想を確かめるための学習計画を立てて調べ、友達と考えや情報を交

   流しながら考えを深めたり広げたりし、最後に自分の学びを振り返るという一連のプロセスが不可欠で

   ある。

⑦同僚性を高め教師が互いに学び合う時間の設定と工夫

  ・月3回の放課後約20分間、授業を担当する教職員及び教務主任が集い、授業の

           実践内容について語り合う「ホットタイム」を設定する。日頃の授業について互

           いに実践を振り返る中で、悩みや指導方法等

   を共有し、時には解決するために対話をすることで、教職員一人一人の課題意識

           を高めたり、同僚性を高めたりして、全教職員が一枚岩となって学校課題の研究

           に取り組む体制をつくっていく。また、話し

   合いの最後に授業改善リーダーや学習指導主任が短期目標を設定し、PDCAサイクルによる授業改善を

   積み重ねることで、実践力を高めていく。

     
6 研究の組織